ファミール天神(アトナノカ)
「はー、リコめ・・・あんな顔されちゃ引き下がりようにも・・・。」
(えっーと・・・304はここか)
ナオキは、一人暮らしでここのマンションの広さは贅沢だと思った。インターホンを押すのは何故かためらってしまった。いや、押せなかった。押した瞬間我がなくなるような気がしたから。ナオキはどうしようもなく、「センパーイいますか?」と言った。
しかし、誰も出てこなかった。玄関付近に行きドアを何回もたたき「オダカセンパーイ、いるなら返事してくださーい。」と言った。が、やはり誰も出てこなった。
(困ったな・・・、カギもしまってあるし・・・どうしよう・・・)
ドアから少し離れて何かが変化するのを待った。
(はー、もう帰ろうかな・・・)
そうナオキが思った瞬間、カチャという音がした。
(な・・・なんの音だろう)
少し不安にだったが、やっとオダカが開けてくれたと思い、ドアに手をかけた。
手をかけた瞬間、ナオキは言葉では言い表せない恐怖に駆られた。
(え・・・う・・・・・・ああ・・・何・・・だ・・・)
ナオキはまるで家の中から引かれる感じがして、恐怖を感じたまま家に入った。
靴を履いたまま部屋に上がりこんだので、廊下は靴がペタペタいう音がするだけだった。
ガチャン!!
皿の割れるような音がした。その音にナオキはハッとした。ナオキはリコにたのまれた事を思い出し、オダカを探した。
(何だろ・・・この感じ・・・。まるで誰かにずっと見張られている感じがする。確実におかしい。窓ガラスに貼られたダンボール、廊下や部屋に散乱している衣類。水道も出しっぱなしだ。とにかくここは危ない早く先輩を見つけて帰らないと・・・。)
ナオキは手当たり次第に部屋を開けオダカを探した。入ってきた時には気付かなかったが、玄関から一番近いドアから光が漏れていた。そこは風呂につながる脱衣所だった。鏡は割れていて、洗面台にはおびただしい汚物と毛髪があった。廊下に光が漏れていたのは、風呂の電気が点いていたからだった。不審に思ったナオキは「失礼します。」と言いながら、風呂のドアをあけた。
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- 2009/07/11(土) 17:11:05|
- ナナシノゲーム:オリジナル小説「ナナシな人間」|
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