プロローグ
ある人は受話器を取った。また、ある人はダイヤルをまわした。ダイヤルをまわした人は何も言えなかった。
その子どもは真似をするように、親指と小指を立て、残りの三本の指をまるめて耳にあてた。ダイヤルをまわした人は、真似をする子どもが本当に電話をしてるように大きな声で独り言をいうので、ダイヤルをまわした人はその子どもの親指と小指を切り電話の真似ができないようにしたという。
無言電話
~♪
東村莉子(ひがしむら りこ)は着信メロディーがうるさくなる携帯電話をとった。
はい?
遅刻しそうで大急ぎで自転車に乗った莉子は、眠さとしんどさが重なりかなりイライラしていたので、口調がどうしても荒くなった。しかも、無言電話。チッと舌打ちをして携帯を切った。そしてさらに自転車のペダルをこぐスピードが増した。
ようやく学校に着いた莉子は、大急ぎで靴を履き替え、教室に飛び込んだ。そのとき、すでに担任の松村が出席・欠席を取っていた。莉子は大声で遅れましたと言い、荒い息遣いで席に着いた。
ホームルームが終わり、皆は廊下へ出たり、携帯をいじってる。莉子のもとに近づいてきたのは、莉子の友達―三崎風香(みさき ふうか)だった。
「また遅刻?りここのままだったらヤバイよ。マジで。」
バカにするような口調で風香は言った。愛想笑いをした莉子は朝の電話の事を言った。
「最近多いのよね~。無言電話。今日も急いでチャリこいでたら、いきなりなったのよ。」
「なったって、ケータイ?」
「当たり前じゃん。」
莉子は今風の、語尾を上げ口調で何事も言った。そして、この話しを聞きつけてきたのは、我が校きっての情報屋、設楽将也(したら まさや)だった。
「また設楽ぁ?今度は何よ。」
莉子は荒い口調で言った。
「ま、まあ、落ち着いて。で、その無言電話今回で何回目?」
興味津々で聞いてくる設楽の顔は輝いていた。
「そんなの知らないわよ。何かあるの?」
「いやさー、最近ほら知らない?これ結構社会問題になってるんだけど。無言電話が発信される場所はいつも違うんだけど、その場所からは必ず両手の親指と小指がない死体が発見されてるんだ。でも、その人が所持してる携帯の一番最近の発信履歴は、必ずその人の両親なんだ。」
風香はウッソー?というような顔をして言った。
「で、でも、それと莉子の無言電話は何が関係してるの?」
「そこなんだけど・・・、東村がいるところでいっていいのか?」
風香が莉子のほうを向き、莉子が風香に目をむけると自然に莉子は頷いていた。
「じゃあ言うけど・・・、無言電話を受けた人はどっかのトンネルで絶対殺されるんだ。しかも自殺、という形で。」
莉子は手が震えていた。それを見た設楽は、でも掲示板でみた内容だからといったが、莉子は聞いていなかった。
「はー、東村に悪いことしちゃったなー。明日謝ろ。さて、パソコンパソコン!」
帰宅し自分の部屋に入った設楽は、パソコンをつけ無言電話の情報を集ようとしたときだった。~♪ 設楽の携帯がなった。設楽はイスから立ち上がり学校のかばんから携帯をだした。
設楽は非通知だったのを気にしながらも、携帯をでた。
「はい。」
電話の先は無言だった。しかし、数秒後に何かがむせび泣く声が聞こえた。
「どちら様ですか。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヒック・・・し・設楽ぁ。お願い。助けて。』
そう言い残して電話が切れた。
設楽は不審に思ったが意識しないように、パソコンを消してテレビつけた。
(はー、さっきの電話誰だったんだろう。あの声は・・・、女子だよな。東村かなあ?)
設楽はニュース番組をボーと見ていた。速報を知らせる音が設楽をおどろかせた。
〈東京都内の電話ボックスで謎の遺体発見〉この表示が四度くりかえされた後、スタジオでアナウンサーが「ただいま入りましたニュースです。東京都内で謎の変死体を発見したと言う通報が入りました。詳しいことはまだ分かりませんが、警察が駆けつけたところ、両手の親指と小指がない遺体が発見された模様です。くりかえします。東京都内で謎の変死体を発見したと言う通報が入り、警察が駆けつけたところ、両手の親指と小指がない遺体が発見された模様です。」と言った。
このニュースをみた設楽は東村の安否が気になり、東村に電話をしたが、誰もでなかった。設楽は言いようもない恐怖感がつのった。そして風呂にも入らず、布団を顔にまでかけ眠りについた。
- 2009/08/31(月) 19:16:35|
- 受話器(小説)|
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