被害者
(どうしよう。東村。頼むから無事でいてくれ。)
設楽は心でそう思いながら登校をしていた。
学校に着き、莉子の靴入れを見たがまだ上靴が入っていた。設楽は俯きながら教室に入ると友達の宇都宮 龍太(うつのみや りゅうた)が話しかけてきた。
「おい!昨日のニュース見たか!?速報でやってたと思うんだけど。その時たまたま電話ボックスにいたんだけど、その死んでた人、見ちゃったんだよ!」
設楽はそれを聞き、宇都宮の襟首を持ち「そいつ、誰だ!?まさか俺らの学校のだれかか・・・?」と怒鳴った。
「え、なんで知ってんの?実は・・・。」
宇都宮は口を設楽の耳に近づき言った。ちょうどその時誰かが教室に入り、扉を開けたので聞こえなかった。設楽は「えっ?」と言い終わったとき、自分の目を疑った。設楽の前を通ったのは、莉子だった。宇都宮の言ってることもよく聞こえなかったが、カバンを机の上に置き携帯を開いた莉子に、設楽はかけより「大丈夫だったのか?」と言った。
「え?何のこと?」
「え!!?昨日のニュース見なかったのか?都内の電話ボックスで・・・。」
そこまで言い設楽は口を止めた。
(そうだ。誰だったんだ?その亡くなった俺らの学校の生徒は・・・。)
そう思った設楽はもう一度宇都宮に聞こうと思ったが、もういなかった。ふう、とため息をついた設楽の後ろでは何かの泣き声が聞こえてきた。振り返ると泣いていたのは、莉子だった。
「え。どうしたの?東村。」
「どうしよう。風香が・・・。もしかして死んじゃったかもしれない。」
それを聞き設楽は驚いた。
「実はあんたの話しを聞いて風香に相談したんだ。
ヒック。そしたら知り合いの占い師に見てもらうからって言って、携帯を預けたの。そしたら・・・。」
そこまで言い莉子はまた泣き出した。しかし設楽は質問をやめようとしなかった。自分の学校での被害者をこれ以上増やさないように、設楽は強引に聞いた。
「頼む。お願いだから聞いてくれ。もう被害者は出したくないんだ。」
大声で言ったので、周りの生徒は一気に設楽の方を見た。設楽は軽く首をふって謝るそぶりを見せた。莉子は顔を上げまた喋りはじめた。
「本当に、ごめん。で、その携帯どうなったの。いま東村が持ってるのはお前のだろ。」
「何でか分からないんだけど、私の家のポストに入ってたの。」
「そ、そうか。ごめんな。何かあったらいつでも俺に相談してくれ。いや、冗談半分じゃないから。真剣に。じゃ。」
設楽は自分の席に戻、携帯をみてまたため息をついた。
その後全校集会が行われ、三崎風香が死亡したことを告げられた。
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- 2009/09/01(火) 19:02:33|
- 受話器(小説)|
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